最近、海外のブログShoegazingで報じられたイギリスの靴屋アルフレッド・サージェント(Alfred Sargent)の倒産。ほんの少しだけイギリスの倒産法をかじったこともあり、倒産手続の概要などをまとめてみました。
アルフレッド・サージェント
アルフレッド・サージェントは、1899年にノーザンプトン州のRushden創業のイギリスの老舗のシューメーカー。日本ではサージェントネームの靴はあまり見かけなかった気がしますが、ガジアーノガーリングやジョージクレバリーのRTWをOEMしていたことでも有名でしょうか。10年ほど前にadministration(後述)を経て、フランス資本により買収されたようです。イギリスではなくフランスに実店舗があるのが不思議だったのですが、そういうことだったんですね。
イギリスの倒産手続:再建型と清算型
一言に倒産・破産と言ってもその中身は様々。その手続は、大まかに①事業の継続が予定されている再建型と②事業の終了・会社の解散が予定されている清算型とに分かれます。
主な再建型の手続:
- Company Voluntary Arrangements(会社任意整理手続)
- Administration(会社管理手続)
- Scheme of Arrangement(スキーム・オブ・アレンジメント)
清算型の手続:
- Liquidation(清算手続)
最近日本でも大きく報道されたのは、2018年末のレコード会社HMVのadministrationでしょうか。Administrationでは、別途選任されたAdministrator(経営管財人)のもとで、①会社を救済すること、②会社の売却などを通じて、債権者全体にとって会社が清算された場合よりもより良い結果を達成すること、または③担保権者などへの配当のために財産を換価することを目指すことになります。
HMVの場合、最終的には一部店舗を閉鎖・従業員を解雇しつつ、カナダのレコード会社Sunrise Recordsが同社を買収することで、同社が存続することとなりました。
アルフレッド・サージェント:Creditors’ Voluntary Liquidation
今回、アルフレッド・サージェントに適用された手続はCreditors’ Voluntary Liquidation/Creditors’ Voluntary Winding Up(債権者任意清算)と呼ばれるものです。これは、会社が支払不能(insolvent)の状態になり、事業を継続できる見込みがない場合に利用されます。
水面下では、上で説明したような手続の利用を検討して会社の生き残りを模索したものの、上手く話がまとまらず、清算という判断に至ったのかもしれません。
現在のステータス
会社(Sargent Shoes On-line Limited )の現在の状況は、Companies House(会社登記所)のウェブサイトで確認できます。
OverviewのCompany Statusを見ると、清算(Liquidation)中であることがわかります。ちなみに、会社名の末尾にLimitedとあるものは有限会社、plcとあるものは公開会社です。
Filing historyでは、無料で一般公開される書類の内容が確認できます。
例えば、この書類では、Liquidator(清算人)が2021年1月28日に選任されたことなどがわかります。
Insolvencyでは、清算人として選任されたPractitioner(倒産実務家:実務経験豊富な会計士などで構成)の詳細と選任日がわかります。
また、The Gazette(官報)のウェブサイトでは、公告の内容が確認できます。
ちなみに、最近双日の撤退が話題となったフォスターアンドサンですが、Companies Houseで調べると、昨年10月23日付で日本側の取締役が辞任したことが見て取れます。こちらもどうなってしまうのでしょうか…
これからどうなる?
会社の取引は停止され、清算人の関与のもとで、会社に残った財産を処分して得られた金銭を債権者などに分配したあと、会社は解散します。
1970年代以降、ノーザンプトンの靴工場の多くが、中国などの企業との競争に直面し、閉鎖を余儀なくされました。日本でもリーガルの希望退職者募集などのニュースが報道されていましたが、今回のコロナ禍が工場閉鎖・縮小の新たな引き金となってしまうのでしょうか…
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