ガジアーノ&ガーリングの工場見学に行ってきました

Gaziano & Girling

先日、ガジアーノ&ガーリングのビスポーク部門でボトムメイキングを担当されている小関さんのご厚意で、ケタリングにある工場を見学させていただきました。この記事では、その際の様子を紹介したいと思います。

ケタリングってどこ?

Google マップ

ケタリングはノーザンプトンシャー(州)の一都市で、ノーザンプトンからは車で40分程度。かつてはノーザンプトン同様靴産業が盛んでしたが、1970年頃には大半の工場が閉鎖してしまったようです。

シンガー製のソーイングミシン(1号機)。
リアルなディスプレイ

電車の場合、セントパンクラス駅からEast Midland Trainsに乗り、1時間程度で到着。ノーザンプトンへ行く場合とは乗車駅が異なります(ノーザンプトンへは、セントパンクラス駅から徒歩10分程度のところにあるユーストン駅を利用)。

これに乗りました。ここからスタンダードクラスの席までさらに1、2分歩きました。車両にはコンセントもあり。

ファクトリーの外観

駅からファクトリーへはタクシーで7~8分。帰りは歩きましたが、駅までは徒歩20分程度でしょうか。工場裏にはチャーチのクロージング部門のファクトリーが、近くにはロークのファクトリーがあるそうです。

内部の様子は…

内部は天井が高く、白を基調としたカラーで開放感があります。クリッキングルーム、クロージングルーム等を除いて仕切りはなく、風通しのよい空間という印象を受けました。ファクトリー内は写真撮影不可のため、文章のみで恐縮ですが、簡単に各エリアを紹介します。

ビスポーク工房

中2階(+1階の一部)はビスポーク部門。私がお伺いした際は、延べ5名の方がいらっしゃいました。3月のSuper Trunk Showの靴制作部門で優勝されたダニエルさんがビスポーク部門を統括し、その他の職人さんが各工程を分担して作業されているとのこと。ビスポーク部門のうち、お一人はSuper Trunk Showのパティーヌ部門に出場、お一人は靴制作部門で6位に入賞される等、錚々たるメンバーです。

クリッキングルーム

1階はRTW・MTO部門。クリッキングルームでは、男性の職人さんが手際よく革を裁断していました。裁断は、半透明のアクリル板の型を使用してクリッキングナイフで行う場合と、裁断機で行う場合があるようでした。職人さんがフレンドリーで、ターコイズブルーのオストリッチ等のエキゾチックレザーを見せてくれましたが、一体どのような方が注文したのか気になります(笑)

また、パティーヌ前のミュージアムカーフを初めて見ましたが、薄いグレーでした。様々な色に染めやすいとのこと。

クロージングルーム

クリッキングルーム隣のクロージングルームでは、女性の職人さん数名が黙々と作業していました(RTW・MTO部門では男性はこの工程は担当していないとのこと)。全モデルのアッパーの見本が壁一面に吊り下げられており、モデルの多さに驚きました。

ラスティングルーム

工場の大部分を占めるラスティングルームには、大量のラストと機械が。ビスポークのラストは木製、RTW・MTOのラストはプラスチック樹脂製。自社製品のラストのほか、ダンヒル等、OEM専用のラストもありました。プラスチック樹脂製のラストの一部には所々乗せ甲用の革が貼られており、MTO向けに細かな調整をしている模様。

実用靴としてタフに履けるように、ボールジョイント部より後ろの部分は特に頑丈に設計しているそうです。また、各作業を待つ靴は、汚れや傷がつかないよう、半透明のビニールで覆われていました(トリッカーズのファクトリーも同様でした。下記写真参照)。

トリッカーズのファクトリー。金曜午後は工場が休みのため、中を見せてくれました。

釣り込み作業の様子を見せていただきましたが、機械を使用しながらも、一足一足職人さんの感覚で微調整しながら作業されており、このような経験に裏付けられた一手間を加えることにより、クオリティの高さが担保されているのではないかと感じました。

フィニッシングルーム

ここでは、以前ジョンロブで勤務されていた職人さんが、完成した靴を一足ずつ磨いていました。使用していたのはサフィール。クレバリー、クロケット、チーニーもしかり、サフィールは強いですね。

検品ルーム

ここでは、納品前の最終チェック・インソックの挿入と仕上げ磨きが行われていました。チェック項目が多数並んでおり、クオリティコントロールのレベルの高さが垣間見えた気がしました。

過去・現在のOEMのインソックもディスプレイされていました。ダンヒル以外にも、チフォネリ(フランスのテーラー)、メダリオンシューズ(中国の靴ブランド)等のOEMも担当しているそうです。

最後に

工場の従業員は30名程度(クロケットの約10分の1)と既製靴を製造する工場としては比較的小規模とのことですが、一人一人の職人さんが丁寧に作業することにより、あのような美しいシェイプの靴が生み出されているように感じました。

Made To Order - Gaziano & Girling Ltd - Bespoke & Benchmade Footwear

新作のAvignon(MTOのcasualsから見られます)。Antibesと異なり、ねじり部分とアッパーの革が一体になっているため、全体のバランスを取るのが難しいとのこと。イギリスでの知名度は他のメーカーに比べるとまだまだという認識だそうですが、Avignonのような靴を含め、今後も靴愛好家をあっと言わせるような靴を作り続けてほしいと思います。

余談ですが、ローファーのストレッチを依頼した際に、モデル、サイズまで記載した靴箱に梱包して返してくれました。しかもクロス、布袋と新品同様の付属品も。今までクロケット&ジョーンズ、トリッカーズ、ジェイエムウエストンの直営店で修理しましたが、ここまで丁寧な対応は初めてです。このような気配りも履き手としては嬉しいですね。

新品の箱と同じ箱です

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