こちらの記事で採寸までの過程を紹介したジョージクレバリーでのレイジーマン(サイドエラスティック)のビスポーク。この記事では、フィッティング~納品までの流れを紹介します。
フィッティング
フィッティングの準備ができた旨連絡があったのが2019年3月下旬。伺った日はアダムが不在だったため、ジョージグラスゴー氏が直々にフィッティングしてくれることに。この日はブレグジットの当初の予定日直前で、各地で大規模デモが行われており、グリーンパーク付近がごった返していたのが印象に残っています。
ジョージが持ってきてくれたのはこちら。
仮縫靴ではなくソールを縫い付ける前段階の本番用の靴です。大幅な修正が必要な場合には一から作り直すとのことですが、裏を返せば基本的には製作開始後のデザイン変更は難しそう。
日本ではマーキスを含め仮縫靴を作ってフィッティングを確認してから、改めて一から本番用の靴を作るお店が多い印象ですが、このあたりはお店によってもやり方が違うようですね。
緊張の足入れ
第一印象は、格好いいけど、思ったより飾り穴が目立つなあというもの。また、全体的に大きく見えるような気を感じましたが、いずれも完成後には解消されていました。納品後に振り返ってみれば、単純にソールが縫い付けられる前&仕上げ前のマットな質感だったことが原因だったのだと思います。
フィッティング
その場で足入れするのみだったので、5分~10分程度と短時間でした。
(1)甲の骨(sensitive boneと言っていました)がやや強めに当たっており、後々痛くなりそうな予感がした点、(2)指の付け根部分のスペースがやや余る感じがあった点、(3)履き口の圧迫感が強かった点の調整をお願いしましたが、それ以外は概ね良好。足の変化の有無を確認するためか(あるいはジョージが自分でやらないと気が済まない性質だったのか(笑))、念のため再度採寸も行われました。
ジョージいわく、tight fittingではなくclose fittingこそがジョージクレバリーの目指すビスポークとのこと。いたずらにタイトであればよいというものではなく、あくまで足に寄り添ったフィッティングでなければならないという趣旨と理解しました。何かとタイトフィッティングがもてはやされる傾向もあるように思われるなか、興味深い話でした。
人たらしのジョージ
フィッティング終了後は小一時間雑談(笑)。ジョージはとても人懐っこい方で、話しているとなぜか距離をどんどん縮めてきます(笑)。ロシアンカーフについての小話など、ざっくばらんに色々と話してくれました。ロシアンカーフについては、手持ちの小物の紹介を含めておいおい別記事でまとめたいと思います。
これは今年の初め頃に発売されたIWCのパイロットウォッチとロシアンカーフのベルトのコラボ。確か限定200本で、販売開始から数分で売り切れたとか。
こちらはロシアンカーフを用いたビスポークサンプル。昔に制作されたものだからなのか、今のものと比較して明るく状態が良さそうに見えます。なお、ロシアンカーフのアップチャージは1000ポンド(トータル4800ポンド)。
納品!
2019年6月に完成の連絡があり、早速ピックアップに向かいました。
いよいよ足入れ。足裏を含めて全体がフィットする感じが心地良い。フィッティング段階では目についた飾り穴も落ち着いた印象になっており一安心。ディテールは別記事でまとめたいと思います。
マイラスト。甲骨付近に革当てして微調整を加えた様子が見てとれます。
ワークショップ
納品後、アダムがワークショップを案内してくれました(なお、地下1階はRTWの在庫等を保管しているとのことですが、ここは見学していません。)。
制作スペース
2階部分は製作エリア。4~5人で一杯になりそうなコンパクトな作業場です。上の棚には革がどっさり保管されています。向かって右側には制作中の靴が置かれていました。
ラストメーカー、パタンナー、クローザー、ボトムメイカーの方々が一堂に会して黙々と作業されていました。なお、以前ラストメイキング等を担当されていたジョンカネーラさんは、現在監修という形で時折いらしているそうです(店舗で何回か見かけたことがあります。)。
ボトムメイカーの岩崎陽平さんは、クレバリーに勤務されて丸7年とのこと。後に靴の調整が必要になった際も、懇切丁寧に対応していただけました。
圧巻のラストルーム
3階にはラストルームがあります。その数延べなんと3000足以上!チャールズ皇太子やデイビッド・ベッカム等のセレブリティのラストも陳列されていました。部屋は木の香りが立ち込め、まるで森に来たかのよう。このなかに自分のラストも保管されていると思うと感慨深いものがあります。
ラストは原則永年保管しているそうですが、昔からの顧客のラストについては、足の形が変わっていることもままあること、また経年劣化の関係から、最初から作り直すこともあるそうです。名前を忘れましたが、20年以上前に最初のラストを作成したイギリスの有名な顧客のラストを最近作り直したという話でした。
完成した靴の紹介とその後の推移、2足目の詳細については、別記事で紹介します。
コメント
ちょっと私が知ってることを少しコメントさせてもらいます♂️
(2)の指付け根のルームについてはマーキスが適正より狭いから広く感じてしまうのでしょうね。着用画像の履き皺を見るだけで直接見てもいない第三者の私ですらルームが足りないことがわかるくらいですから、、、
あとクレバリーのビスポークサンプルは全て93年以降に作られたものです(95年くらいに買い取ったアンソニーの顧客のビスポークを除く。)。N&L時代のサンプルは持ち出さなかったので(顧客のラストの持ち出しもやっと認められたとのことでした)。
ロシアンカーフのサンプルは93年当初はパーフォレーテッドキャップトゥ(N&L時代と同じデザインだけどガッシリ目になった)のみで、エプロンダービーは98〜99年くらいに出来たものですね。基本的にロングノーズの物はそのくらい以降からの物です。
貴重なご経験をシェアして頂き、ありがとうございます!指付け根のスペースはおっしゃるとおり、今から振り返ってみればマーキスが狭すぎました。。アダムもこのスペースは削りすぎないほうがよいと言っていましたが、クレバリーの1足目はこの点ちょうど良いです。
ビスポークのサンプルはいずれも再興後のものなのですね、てっきりその前からあるものだと思っておりました。古さを感じさせないのはさすがですね。