木村和哉さんのビスポーク靴をオーダー【K.Kimura】

K.Kimura Fussbekleidungskunst

昨年、ドイツのパトリックフライさんの工房で勤務後、日本に帰国されたビスポーク靴職人である木村和哉(きむらかずや、kazuya kimura)さんの工房に伺い、ビスポークシューズをオーダーしました。最近届いたフィッティングシューズも紹介します。

K.Kimura Fussbekleidungskunst

作り手の木村和哉さんはエスペランサ靴学院を卒業された後、日本での実務経験を経て、2019年から2023年までの4年間、ドイツ・フライブルクに工房を構えるパトリックフライさんの工房で共同製作者として勤務されていました。パトリックフライさんは、2018年に開催されたChampionship in shoe makingで優勝された凄腕の靴職人さんです。

パトリックフライさんの工房内でのパトリックさんと木村さん(2020年)

その後、2023年に日本に帰国され、ご自身のブランドであるK.Kimura Fussbekleidungskunstを立ち上げられました。

Fussbekleidungskunst(フスベクライドゥングスクンスト)は英語だとart of footwearといった意味のようです。字体もドイツで戦前に用いられていたフラクトゥールが使用されており、こだわりが感じられます。

パトリックフライさんの記事はこちらのリンク先からご覧いただけますのでご興味があれば。

工房訪問

木村さんにはパトリックさんの工房時代から私の靴を(パトリックさんと共同で)3足作っていただいており、その凄腕は体感済み。

1足目
2足目
3 足目

帰国・独立された折には是非お願いしたいと思っていました。ということで、神奈川県の辻堂にある木村さんの工房にお伺いしました(アポイントは、木村さんのインスタのプロフィール欄に記載のメールアドレスから可能です)。

ドイツ等で収集されたという靴作りの道具や文献等が並べられた工房。フライブルクの工房に戻ったような懐かしい感覚でした(木村さんのインスタのアカウントではより多くの写真が公開されています)。

パトリックフライさんは「今や失われかけた古典的な靴作りの知恵を生かした靴作り」、特に19世紀~20世紀初頭の英国・ドイツの手製靴に関する文献・資料を紐解き、現代の靴作りの方法と過去の靴作りの方法とをミックスした靴作りを志向されていたと理解しています。

これに対して、木村さんはそういった過去の、特に1870年~1930年代の(ドイツ語など外国語の)文献・資料を徹底的に分析し実践する、という点で、パトリックさんとは異なる姿勢を採られています。本棚を埋め尽くす文献の量はもはや学者さんのようで、その探求心に頭が下がります。

靴作りの本場といえば英国のノーサンプトンというイメージがありますが、例えば、型紙や採寸の方法といった現在の靴作りのベースとなる技術は、ドイツの靴職人によって体系化されたとのこと。それだけに、読み解いていくと新しい発見があるのかもしれません。

サンプルシューズ

こちらは代表的なスタイルの一つであるプレーントウのサンプルの一部から。パターンのバランスは当時の文献等に沿ったものでしょうか、新鮮に映ります。

シューレースはヴィンテージのレーヨン製でエレガントな印象。日本でも同じような質感のシューレースが調達できないか検討されているとのことです。

採寸

一人で工房に伺ったこともあり写真は撮っていませんが、採寸は立位・座位の両方で行われました。私が経験したなかでは、比較的細かめにデータを採られていたほうかと思います。

踵の形状を測定する器具(イメージとしては、オーダー枕等で首の形状を測るための器具に近いです)の利用など、パトリックさんの採寸方法も取捨選択の上、ご自身の採寸方法を確立されたそうです。

仮縫い靴

木村さんからはサンプルシューズ以外のスタイルを含めていくつかご提案いただきましたが、お願いしたのはこちらのローファー(以下は仮縫い靴の写真です)。今回はローファーでフィッティングの精度がより求められるため、充実したフィードバックを得られるよう、事前に仮縫い靴を送っていただきました。

訪問時に提案いただいたのは右足分のエプロンありのデザインでしたが、左足分も別デザインを起こして作成くださるという嬉しいサプライズ。他にもいくつか用意いただいているとのことで、頭を悩ませそうです…

この靴、サドル部分に、他の革靴には見られない特徴があります。

型紙を見ると…

何と、1枚の革を1周させるパターンです!後ろから見るとシームレスヒールに見えます。

デザインしているときにふと思い浮かんだそう。こういった一見気が付かないが実は独創的、という仕掛けは、高い製靴技術をお持ちの木村さんだからこそ可能なご提案であり、オーダーしたかいがありました。

アッパーはカールフロイデンベルグ。ドイツ滞在中に良質な革の調達ルートを確保されたそうで、このあたりは現地で勤務された木村さんならではのアドバンテージですね。

ちなみに、私はパトリックさんのオーダーの積み重ねがあったこともあり、1足目としてはチャレンジングな感があるローファーをお願いしましたが、そのような事情がなければ、サンプルシューズのような紐靴を注文していたと思います(そのほうが、長い目で見て完成度の高いフィットを得られる可能性が高くなるように思いますので)。

仮縫いへ

木村さんと相談の上、パトリックフライの靴よりもさらに攻めた(足との一体感を高める方向での)フィットにしていただいています。仮縫いが楽しみです。

ちなみに、2023年秋に発売されたLast の25号で木村さんのインタビュー特集記事が掲載されています。読み応えのある内容なので、興味がおありの方はご一読されるのはいかがでしょうか。

LAST(25)2023年12月号[雑誌]: クロノス日本版 増刊
LAST(25)2023年12月号[雑誌]: クロノス日本版 増刊(Kindle版)

コメント

  1. クラチ より:

    以前からブログを拝読させていただいていたものです。
    久しぶりに更新記事を見れて、なんだか安心しました笑

    木村さんの靴もとても興味があるので、仮縫い〜完成までまた記事にしていただけると嬉しいです。

    • 散財夫婦散財夫婦 より:

      クラチさん、コメントいただきありがとうございます。中々筆が進まなかったのですが、そう言っていただけると励みになります。
      納品後にまた投稿できればと思っておりますので、よろしければまたお越しいただけると嬉しいです。木村さんはまだ露出少なめですが、今年は色々動きがあるみたいです!