2018年のWorld Championships in Shoemakingの優勝者、パトリックフライ(Patrick Frei)さんと木村和哉さんの手によるビスポークシューズ。前編に続いて、後編ではディテールを紹介します。
全景
まずは全景から。
ビスポークサンプルに穴飾りを加えたのが主な変更点の一つです。革はゾンタのゴルダニルカーフ。
ラインの取り方が絶妙に美しいです。
パトリックさんいわく「Bridge-oxford」というスタイル。一見シームレスヒールに見えますが…実はよく見るとサイドに縫い目があります(木村さんのインスタの投稿の型紙を見ていただくと仕組みがわかります。)。
強度を損なわず、美観を追求した仕様といえるでしょうか。
ディテール
トウのメダリオン。
丸みのある感じが独特の雰囲気でしょうか。穴飾りは、その表情を楽しんでもらいたいとのことであえて染めずに仕上げているそうです。
レースステイ部分には同色のクラストレザー(未仕上げの革)を選択しました。クラストレザーについては、ビスポークサンプルのように型押しなどの何らかの加工を施すことも候補に挙がったものの、議論の結果、すっきりとまとめるために、手を入れないことに。主張しすぎない感じに落ち着き、正解でした。変化も楽しめそう。
また、ヴァンプ中央の飾り穴が小さくなっています。これは、着脱時に負荷がかかりやすい中央部分の穴が裂けないようにとの観点から意図的に変更したものだそうです。
コバの仕上げも乱れがありません。
レンデンバッハのソールのナチュラル仕上げ。飾り釘がエレガントすぎます…!!ちなみに、インソール、ウェルト、芯材いずれもレンデンバッハを使用されているとのこと。日本にはもっぱらソールが輸入されているそうですが、ドイツでは他の部材も有名でその品質に定評があるそうです。
このトウスチール、なんと真鍮製のプレートから切り出した自作のもの。なんでも、ビスポークシューメーカーでも使われているluluなどのスチールは美しくなくビスポークシューズには似合わないから、というパトリックさんのこだわりだとか。厚みもLulu(約1.5mm)よりも分厚い2mmほどで、強度も十分だと思います。単純なので、こういう特別仕様、大好きです(笑)
インソールには工房で見せてもらった紋様を型押ししていただきました。
こだわりのシューツリー
3ピースのシューツリー。微妙にさび付いた風貌のリングフックもマッチして、すでにヴィンテージ物のような風格が漂っています。一つ一つのディテールに妥協しないお二人だからこそ、部材の選定にもこだわわれているのではないかと推測します。
埋め込みのロゴも格好いい。
が、初の3ピースで着脱が難しい…今度木村さんがレクチャーしてくれることになりました(笑)
履き心地
さっそく室内で数時間履いてみました。最初に驚いたのはソールの立体感。採寸時にかなり底面を触っていた印象でしたが、足入れの瞬間から、踏まずから親指方向に向けて支えが感じられ、非常に心地よいです。整形靴が発展したドイツの知見を取り込んだパトリックさんの特色が現れているといえるでしょうか。
仮縫いで挙がったヴァンプ・かかと回りの空間も適切に修正されていました。今はまだソールが固いですが、馴染んだ頃にさらにどうフィット感が高まるのか期待大です。
最後に
パトリックさん、木村さんのお人柄にもよるのでしょうが、採寸・仮縫い・納品の過程でお二方と充実したやり取りをすることができ、今までの経験で今回が一番「ビスポーク」の醍醐味を味わうことができたと感じています。今はコロナ禍で直接お会いすることが叶いませんが、再会の日まで、大事に履きこみたいですね。
7月に2足目をオーダーしました。
コメント
kaisei_yaさん、ご無沙汰しております!そして納品おめでとうございます◎
記事を拝見させていただいて、もう「圧巻」の一言です。
神は細部に宿る、ではないですが、写真だけでもアッパーはもちろんインソールやアウトソールの見えないところまですばらしいですね!
3ピースのツリー、私も最初は苦戦しました^^;
それだけぴったりと作られている証拠でもありますが、慣れればすぐだと思います。
履き込みの様子も楽しみにしております◎
まるすけさん、ありがとうございます!コメントいただいていたのに気がつかず失礼しました。
まさに渾身の一足といった仕上がりで、大変満足しています。シューツリーは大分楽に抜き差しできるようになりました。失敗して靴を痛めないかちょっと不安になりますが、見て楽しめるのはスリーピースの一つのメリットかもしれませんね(^^